借主が借金を返済できなくて困っているとき、何らかの有効な法的手段があるでしょうか。
まず、法律上返済義務自体を争う場合があります。たとえば、実はすでに返済されているとか、時効により債権が消滅しているなどです。前者には、利息制限法の利率を超えて払いすぎたため、本来の債務額はもっと少ないと主張するケース(①)や、返済すべき債務がすでになく、むしろ払いすぎているからその分を取り戻したいというケース(②「過払い事案」)も含まれます。
②の過払い事案では、債務を負わないという側面と債権者として貸金業者から過払い金を回収するという側面があります。後者の側面は厳密に言うと借金の問題というより債権回収の問題となります。過払い事案でも、すでに完済されているケースだと債務を負っているという側面がないので、純粋な債権回収の問題なのです。
ちなみに、上記過払い事案などでは、利息の引き直し計算が必須となります。それをすることで、債務がいくら残るのか、もしくは全く残らず過払い状態となっているのか、過払い額がいくらなのかなどが判明します。
さて、このように返済義務を争えるケースとは異なり、法律上債権者の主張する債務が存在するケースの場合はどうでしょうか。この場合、債権者は期限到来などの要件を満たせば法的に借主に金銭の返還請求ができます。それでも支払いがなければ、債権者としては訴訟を起こして判決を取得し、借主の財産を強制執行により差し押さえるという手続きをとることが法律上可能なのです。
この場合、返済に困っている借主としてとりうる手段としては、大まかに、任意整理、自己破産、個人再生などがあります(その他にも特定調停などがあります)。
任意整理とは、裁判所を介さずに、弁護士などの専門家が借主の代理人として債権者と交渉し、将来利息などをカットするなどし、分割弁済の和解をすることなどをいいます。自己破産や個人再生は、管轄の裁判所に申し立てることで借金の返済義務を免責してもらったり(いわゆる「チャラにしてもらう」ということです)、減額してもらったりする手続きで、認められるためには種々の要件が定められています。
いずれの手続きもメリット・デメリットがあり各要件も異なるため、どの手続きを選択するかについては個別の事情を勘案する必要があります。
専門家である弁護士にご相談いただければ、個別の借金事案において適切な手続きが何かを提案することができます。また、それぞれの手続きのメリット・デメリットを相談者様のご事情を前提として説明することができます。
もちろん、引き直し計算や債権者への照会をしないとわからないことも多いです。事件のご依頼をいただければ、依頼者様にとって適切な手続きを依頼者様とご相談しながら取捨選択していくことになります。なお、弁護士が受任通知を債権者に送付した後は、弁護士が債権者との交渉にあたります(債権者から依頼者様への郵便や電話はストップします)。また、返済も停止することになりますので、その間、依頼者様の家計の収支状況等を勘案しながら、適切な手続きを考えることになります。
ご依頼による弁護士費用は「弁護士費用」の債務整理事件の表をご覧ください。